親の財産
親が亡くなって相続が開始したとき、親の総財産(すべての遺産)を把握なさっていますか。
たいていの場合、不動産についてはご存じです。ご自身が住んでいた土地と建物とか、賃貸のために所有していた不動産などは、日頃からお聞きになっていることが多いですし、固定資産税等の支払いもあったでしょう。
預金・貯金はわかることもあるし、わからないこともあります。
不動産についても預貯金についても、相続時に相続人の誰かが他の相続人に内緒で自分のものにしたのではないかというご相談はよくあります。(要するに、自分の兄弟姉妹などが親の財産を内緒で独り占めしたということです。)しかし、正式に相続が開始したあと、内緒でするのは難しいだろうと思います。
「独り占め」するケースとしては、亡くなる前に(相続開始の前に)親が預貯金を引き出したことにして、自分のものにするとか、あるいは、実際に親が引き出しておいて、他の相続人に内緒であげおくなどです。
ひとりが相続手続きを済ませた
相続手続きはどうしようかと思っていたら、相続人のひとりから、「相続手続きはすべて済ませた。」という簡単な手紙がきて、遺産分割協議をする必要もなく、すべて終わったと知らされたということがあります。どうしてそんなことになるのでしょうか。
たとえば兄弟姉妹が2人以上いれば、遺産をどのように分けるのか協議するのが原則です。
協議で決まらなければ、とりあえず「法定相続分」という目安があります。この場合、誰かがひとりで勝手に相続手続きを済ませることはできません。
しかし、もし本当に協議の必要もなく相続手続きを済ませたというのであれば、遺言書があって、その遺言書を使ってひとりで手続きをして、全財産がその人のものになったということなのかもしれません。(これも少々おかしいですが、おかしいことはよく起こります。)
遺言書はあったのか
遺言書には2種類あります。
- 自筆証書遺言:遺言者自身で作成するものです。亡くなってから、この自筆証書遺言が発見されないと、作成しなかったのと同じことです。これをみつけたら、裁判所で検認をしてもらう必要があります。裁判所で検認という手続きをするために呼ばれると、「さあ、これで相続が決まる!!」と思っていたりすると拍子抜けしてしまうほどあっけない簡単なものです。検認のときに、戸籍なども提出して相続人が確定しますから、裁判所から「検認手続きがあるのでおいでください。」というようなお知らせがきます。もし、これが来なかったのなら、自筆証書遺言ではなく、公正証書遺言があった可能性があります。
- 公正証書遺言:遺言書を公証役場という役所で、戸籍や身分確認の書類などを確認した上で、証人も同席して作成しているはずです。公正遺言証書があれば、検認は不要です。公正遺言証書があれば、特定の相続人がひとりで手続きできることもありますが、亡くなった人の相続人は誰でも、公正証書遺言をしていたかどうかを確かめることができます。全国どこの公証役場でもよいので、自分が相続人であるという証明書類をもっていけば、公正証書遺言をしたかどうかを調べてくれます。その遺言書の写しを入手するには、その公正遺言証書を作成した公証役場まで行かなければなりません。公正遺言証書があっても、相続人の誰かが、相続開始をしらないまま、すべての手続きが終わってしまうことはないはずです。
独り占めできるのか
上に書きましたように、誰かがひとりで相続手続きをして、親の財産を全部入手したといわれたとすると、まず考えられるのは遺言書の存在です。しかし、
もし、本当に財産を独り占めした相続人がいるのなら、遺留分減殺手続きも可能かもしれません。
「自分ひとりで相続手続きをしたから、相続の協議など必要ない。この件でもう連絡してくるな。」という相続人(共同相続人)が結構おられるようですが、もう本当に「終わってしまった。もう為すすべがない。」とはかぎりません。
自分ひとりで手続きが終了したと言っている人に、
- 「どうやったのか教えなさい。」
- 「遺言書があるなら見せなさい。」
- 「私への相続財産がないはずはない。」
などと言っているよりも、自分で調べて専門家に相談したほうがストレスも少なく、スムーズに(そして多少は円満に)解決すると思います。このような場合、相手と直接電話で話し合うのことはお勧めしません。たいてい複雑化する(感情的になる)だけです。
見本をご覧に入れます
ご希望があれば、以下のものをご覧いただけます。(実際に、相続問題に直面している方、遺言書を作成しようかと考えている方に限定させていただきます。たとえば、法学部の学生なので見てみたいというようなご要望にはおこたえできません。)
気持ちの問題も含めた法的手続き
相続はおそらくご自分が考えておられるよりも障害が多いです。重要なのは、これまでの親子・兄弟姉妹の歴史も含めて「平等・公平」かどうかでしょう。
財産(遺産)を均等に分ければよいのではありません。法定相続分どおりに分割しても本当の解決はしません。(均等とか法定相続分どおりなら法的には整ってみえるのですが、家族の歴史などを考慮すると、法律問題だけでは済みません。)
また、現金以外の財産もあるので、均等に分けることは意外と難しいです。
当事務所では、そのような気持ちの問題を含めて総合的にお受けするようにしています。
川崎市・中原区・幸区・高津区・麻生区の方、東横線・南武線沿線、小田急線・田園都市線をご利用の方からのご相談が多いのですが、川崎市内だけでなく横浜市・東京都大田区・世田谷区・目黒区などからもよく来られます。
また、多くの業務は全国対応しています。
ほとんどの業務は全国対応していますが、面談したほうが「よい仕事」ができる場合があります。たとえば、遺産分割協議・示談書や念書の作成・内容証明郵便に返事を出すというような場合です。(相続・遺産分割の際にも、内容証明郵便での通知が役に立ちます。)
書面の作成は、単純なケースならご自分でひな形を参照すれば十分なのですが、ひな形を少し変えただけで、かえって不利になったり、無効になったりすることもありますのでお気をつけください。
専門家に相談・依頼するのは、極力そのような失敗を避けるためであり、「保険」のような効果があるとも考えられます。