相続で仲間はずれにされた
「相続で仲間はずれにされた」というタイトルですが、父とか母が死亡して、自分が相続人なのに、自分に知らされないまま、他の兄弟姉妹が親の不動産の相続手続きをしてしまった。自分の相続権が無視されてしまった、というようなことです。
法的にはそのようなことはできないはずですが、こういうご相談は少なくありません。
長男が家を継ぐ
たとえば、A子さんの父が死亡して、父についての相続が開始したとします。
相続人は、A子の母・A子の兄・A子の3人だけとします。(相続人は、配偶者と長男・長女ということです。)
昔、よく耳にしたのは、父も母も兄を跡取りだからと優遇し、「嫁にいった女の子であるA子」は相手の家に入ったのだから、父の相続には関係ない、だからA子は何も相続させてもらえなかったという話です。
長男を跡継ぎと考えるというのはよくあります。
それなら、女の子は、嫁にいけば、夫の家の人間ということになるでしょう。
(ただし、昔であれば、嫁入りのための財産は持たせてやったのです。経済的に余裕がないのでそれどころではないということなら話はまた別です。)
亡くなった父の財産は長男が継げばよい、ということになります。
以上の話を、時代錯誤だと思う人と、現在でも活きていると思っている人がいます。
不動産の相続手続き
亡くなった父に不動産があった場合、現在の法律では相続人全員の同意がなければ、名義変更(所有権の変更)はできません。(例外はあります。)
そこで問題なのは、嫁にいった娘(A子)を無視して、父の不動産を兄ひとりが相続してしまったという話は事実なのかということです。
本人(A子)に事情を聞いてみると、
- 自分の戸籍謄本と印鑑証明書を不正使用されたのでは?
- 遺産分割協議書を偽造(妹の署名を勝手に書かれた)のでは?
と思っているようです。
自動車運転免許証でもパスポートでも偽造される時代ですから、遺産分割協議書の偽造くらいは、あり得ることかもしれません。
相続に不正はあるのか
相続で不正をする人はいるのでしょうか。本来は「特別受益」として計算しなければならないところ、このことを黙っているというようなことはよくあると思います。しかし、不正をするには、「不正をしてでも」という強い意志と、実際に不正をする技術が必要です。A子の兄や母がそういう人だったでしょうか。
親子や兄弟姉妹で仲が悪いことはよくありますから、「不正をしてでも」と考えている人は多いのかもしれません。実際、相続手続き・遺産分割協議の際に、相続人同士の間で嘘をいう人は結構多いのです。
嘘をついてでも構わない、不正をしてでも遺産は自分が多くもらって当然、等々と考えてはいても、それまで普通に生きてきた人にとっては、不正を実行するのは結構ハードルが高いものです。
日頃、詐欺行為をしてきたような人なら実行するでしょうが、ここにあげた事案のような例では、母も兄もそのようなことはしていないことがほとんどです。
不動産を相続できない例
あくまでも一例にすぎませんが、次のようなこともあります。
(1) 遺産分割協議で、父が持っていたはずの不動産が話題にならない場合、相続開始前にその不動産が売却されていることがあります。売却して得たお金を兄がもらっているということはありませんか。
(2) あるいは、その不動産を兄が父から買い取った形になっていないでしょうか。親から買い取る場合、かなり安く買うことができます。兄が買ったから、相続・遺産分割のときには話題にならず、いつのまにか兄の所有物になっているということもあるかもしれません。
(3) もしかすると(2)で、兄が買い取る費用を親があらかじめ与えていたかもしれません。親が、このお金で親の不動産を買いなさいといって、お金を渡しているというケースです。
自分が知らないうちに不動産を兄が相続したと思ったら、その土地の不動産登記簿(不動産登記情報)を確認してみてはいかがでしょうか。不動産登記簿は、誰でも閲覧可能なように作成してあるのですから、遠慮なく調べましょう。
登記簿(不動産全部事項証明)という書面を交付してもらうよりも、閲覧に行ったほうがたくさんのことがわかるかもしれません。自分ではどうもという人は、ご相談ください。
自分は何も手続きをしていないのに、親の不動産をいつのまにか他の相続人が引き継いでいる、というお話はよく聞きます。お金(現金・預貯金)についてもいろいろな問題があります。
本来はそのようなことはあってはならないのですが、現実にはおかしなことがよく起こります。