重要なことをするときは、たいてい気が重いものです。遺言書を作成するほうがよいとは思っていても、たとえば次のようなことはありませんか。
自筆証書遺言
自筆証書遺言を作成するには、内容や形式が整っていなければなりませんが、
- 思い立った時に、
- 完全にひとりで、
- 内容をまったく誰にも知られることなく、
- 費用もかからずに
作成できるというメリットがあります。
しかし、全文をひとりで書き上げるには気力・体力も必要です。ただし、平成31年(2019年)1月13日以降に作成する場合、財産目録については自筆の必要はありません。
後々のことを考えると、今作成すべきと判断して作成なさる人もおられますが、身近な人と話し合って遺言書を作成する合意をしている人も多くおられます。
本人の意思に基づいて書くとはいえ、全文をある程度きれいに書くとなると大変で、数行ずつ何日にも渡って、面倒がる本人を家族などが勇気づけたり励ましたりしながら作成することもあるでしょう。
これは無理やり書かせているということではなく、本人が自筆で書こうとしているので、協力しているだけです。
内容が適切・妥当かどうかは、相続が始まってみないとわからないということもありますが、内容に自信がある人以外は、できるだけ妥当な遺言書になるように専門家に相談するとよいでしょう。行政書士は法的なこと、本人の希望、家族の事情などを考慮してアドバイスするはずです。
公正証書遺言
公正証書遺言の場合は、たいていの場合、相続人(のひとり? あるいは数人)が遺言書の全内容を知っています。遺言書を作成する本人と、その相続人と相談の上でおよその内容を決めていると思いますが、行政書士等の専門家に相談する人も多いです。
さらに、戸籍や印鑑証明など必要書類を集めます。簡単に集まる場合と集めにくい場合があります。
公正証書作成には証人が必要です。行政書士が適任者を手配することができますので、友人・知人などに依頼しないほうがよいと思われる場合はご相談ください。
公証役場で作成するものですが、事情により公証役場へ行くことができなければ、公証人さんが出張してくれます。
遺言書をパソコンで
全文自筆で書くのは疲れて無理だが、パソコンでなら書けるという人もおられます。そこで秘密証書遺言にしてはどうかという案が浮かびます。
遺言書を書くときの問題点として
を紹介しましたが、秘密証書遺言であれば、
- 全文を自筆で書くのが疲れる
- 相続人などに内容を知られると困る
ということはありません。
- 遺言書を作ったことも知られたくない
という点もおそらく大丈夫です。具体的には次のようになります。
- 全文を自筆で書くのが疲れる: キーボードなどを打てる人ならそれほど難しくありません。
- 戸籍などの書類を集めるのが大変: 事案によります。遺産を譲り受ける人の戸籍や住民票が必要になることがあります。自分の戸籍は必要です。行政書士が集めることもできます。
- 内容は大丈夫か(将来、争いを引き起こさないか): これは断言できません。行政書士や公証人が関与しても、将来、争いが絶対に起きないという保証はありません。契約書などでも、「これがあれば絶対に争いは起きない」ということはないのです。内容によりますが、まず行政書士に細かな事情をお話しいただければ、ふさわしい内容検討し、公証人さんとも協議などいたします。
- 相続人などに内容を知られると困る: 秘密証書遺言は、公証役場で作成しますが、公証人は内容を見ません。家族・相続人に内容を見せたくなければそれも可能です。
- 遺言書を作ったことも知られたくない: これは、自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言に共通ですが、やりようによって可能でしょう。
秘密遺言証書の加除その他の変更方式は、自筆証書遺言と同じですが、せっかくパソコンで作成してもよいのですから、加除・訂正ではなく、修正して印字しなおすほうが安全ですし容易です。
(秘密遺言証書は、遺言者がその証書に署名押印して、その証書を封じて、証書に用いたものと同じ印章で封印し、公証人と証人2人以上の前に提出して、「自己の遺言であること」「筆者の氏名・住所」を述べ、公証人がその証書を提出した日付と遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者および証人とともに、これに署名押印して作成します。証人も行政書士がまったく面識のない人を斡旋できますから、相続人等(家族など)にうっかり知られてしまうことが避けられます。)