自分が死亡した場合、配偶者と子がいれば配偶者と子が相続人です。配偶者がいて子が(子も、孫も、ひ孫なども)いなければ親が相続人です。もちろん親(父母の一方だけでも)は存命でなければなりません。
- 自分の配偶者と自分の子が相続人であれば、配偶者の法定相続分は2分の1です。
- 自分の配偶者と自分の親が相続人であれば、配偶者の法定相続分は3分の2です。
代襲相続
年齢順に考えると、自分の子よりも自分の親が亡くなるでしょう。親が先に死亡していれば、相続人は配偶者と子(子がいなければ、孫やひ孫など)なので、よくあるケースです。
不幸にして、子が先に死亡していれば、代襲相続が考えられますから、子の子(自分からみれば孫)が相続するでしょう。配偶者の法定相続分は2分の1です。
さらに、孫も「ひ孫」などもがいなければ、財産は親へ行き、親が亡くなった後、親の法定相続人へ相続されますから、相続財産の行方はやや複雑になります。
同時死亡の推定
子が登山中に遭難して死亡したとします。また、親が飛行機事故で海上で死亡したとします。
どちらの死亡日時も明確でなければ、同時に死亡したと推定することになっています。実際の死亡時刻は、数時間・数十時間も異なるのだと思います。(推定とは、「とりあえずそういうことにしておく」のであって、もし、きちんとした事実が出てくれば、その推定はくつがえされます。)
もし、子と親が病院に入院していて死亡したなら、死亡時刻が何時何分まで記録されているでしょうから、「同時死亡」の推定をされるようなことはないと思います。海や山での遭難とか、自殺、孤独死などの場合には、死亡推定時刻しかわからないでしょうから、同時死亡の推定という規定があります。
相続する人を決めておく
親と子が、同じ交通事故で死亡したとしても、ふたりが完全に同時に死亡することはないと思います。実際には数分とか数秒はかならず異なるでしょう。この場合に、同時に死亡したと推定しようということになります。これはまだわかりやすいのですが、一方は山で、一方は海でというように完全に別々に亡くなったりすると、同時死亡の推定という規定が理解しにくいかもしれません。
親と子が同時に死亡したとする(推定される)と、法定相続人が誰になるのか確認しなければなりません。「もし誰々が私よりも先に死亡している場合は〜」のように指示しておくことができます。【代襲相続】もご参照ください。
相続のときに同時死亡の推定が問題になる人は多くはありませんが、重要な財産をお持ちだとか、自分の遺産を受ける人を決めておかないと他人に迷惑がかかるということもありますから、そのような財産をお持ちの方は、早く遺言書を作成しておくべきでしょう。
実際に計算すると
試しに計算例を用意してみました。遺言書はなく、法定相続分どおりだとすると、誰がどのように相続するでしょうか。
人間関係は
- 甲夫と乙子は夫婦
- 甲夫と乙子の子:丙子
- 丙子に配偶者はいない
- 丙子に子供はいない
- 甲夫の母は既に他界
- 甲夫の父は健在
ということにします。
遺産は
- 甲夫:3000万円
- 丙子:900万円
です。簡単に図にすると、次のようになります。
計算例 その1 子が先に死亡
甲夫と丙子が一緒に飛行機に乗ったところ、事故で墜落しました。
すぐに救助隊が駆けつけ、丙子は事故現場で死亡が確認されましたが、甲夫は病院へ搬送され、翌日、死亡しました。(丙子が甲夫より先に死亡しました。)
まず、丙子の相続が開始します。
丙子には、配偶者も子もいませんから、遺産は親である甲夫と乙子が等分に相続します。丙子の相続開始時に甲夫は生存しているので、甲夫は相続人です。
丙子の遺産900万円について
- 甲夫:450万円
- 乙子:450万円
の割合で相続します。その結果、甲夫は自分の3000万円と丙子の相続分450万円を所有しますから、総額3450万円を所有します。
甲夫の死亡時の遺産3450万円については、
- 配偶者である乙子(3分の2):2300万円
- 甲夫の父(3分の1):1150万円
丙子についての相続と甲夫についての相続で、最終的に
- 乙子:2750万円
- 甲夫の父:1150万円
となります。
計算例 その2 親が先に死亡
甲夫と丙子が一緒に飛行機に乗ったところ、事故で墜落しました。
すぐに救助隊が駆けつけ、甲夫は事故現場で死亡が確認されましたが、丙子は病院へ搬送され、翌日、死亡しました。(甲夫が丙子より先に死亡しました。)
甲夫の相続では、妻である乙子が2分の1、子が2分の1ですから
- 乙子:1500万円
- 丙子:1500万円
を相続しますから、丙子は900万円と合わせて2400万円を所持します。
その後丙子が死亡しますから、丙子の2400万円は乙子が相続します。結局、乙子が甲夫の3000万円と丙子の900万円の全額を相続しますから、
- 乙子:3900万円
となります。
計算例 その3 同時死亡の推定
甲夫と丙子が一緒に飛行機に乗ったところ、事故で墜落しました。
すぐに救助隊が駆けつけましたが、甲夫も丙子も事故現場で既に死亡していました。どちらが先に死亡したかはわかりません。(同時死亡の推定)
- 甲夫の相続につき、丙子は相続人になりません。
- また丙子の相続につき、甲夫は相続人になりません。
- 甲夫の3000万円は、乙子と甲夫の父が相続します。
- 丙子の900万円は、乙子がひとりで相続します。
結局、
- 乙子:2900万円
- 甲夫の父:1000万円
となります。
この「計算例 その3」がわかりにくいのではないでしょうか。
甲夫の相続については
と考えるとわかりやすいでしょう。
丙子の相続については
と考えるとわかりやすいでしょう。
しかし、法定相続分を参考にするとしても、相続人全員でおこなう遺産分割協議で円満に相続分を決めることが望ましいでしょう。