まず、私自身のことを書かせていただきますが、私は遺言書を作成してあります。遺言書の種類はいくつかありますが、私が作成したのは自筆遺言証書です。遺言書は結論だけ書かれていることが多いのですが、私は遺言書にその内容を記載した動機や経緯も書いています。私の少年時代や父や母のことまで書いていますから、私の「ヒストリー」になってしまっているのではないかと思うほどです。
相続人全員の同意があれば、遺言書の内容と異なる相続をしてもよいことがありますが、その場合に、相続人が私の遺言書をどのように解釈すべきか理解してもらえるようにと考えてのことです。
上に、「私は遺言書を作成してある」と書きましたが、正確には「遺言書を作成し続けている」というべきかもしれません。重要な内容は変えていませんが、思い出したエピソードを追加したり、もっとわかりやすいようにと変更し続けているからです。
自筆証書遺言は文字どおり「自筆」で書かなければなりません。そんなに長い遺言書を何度も書くのは大変だろうと思われるかもしれませんが、いろいろと方法はあるのです。
一度作成した遺言書を頻繁に書き換えることはお勧めはしていませんが、そのようなことができるのも自筆証書遺言の良い点です。一般には、「遺言の付言事項」として遺言書の最後に記載するでしょう。
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遺言書を作らない
西洋では遺言書を作成する人が多いそうですが、日本では遺言書は作らない人の方が多いようです。理由はいろいろあるでしょう。たとえば、
- 自分の死亡後のことをイメージできない。
- 相続人の間でトラブルが起こるとは思えない。
- 後で作成すれば大丈夫。
- 遺産分割は平等に(法定相続分に)すればよい。
- 長男が家を継ぐから、長男が兄弟姉妹に財産を不公平なく分けるだろう。
- 離婚した人との子とは交流がないから、相続には関係がない。
というように考えているでしょうか。現実には、
- 事故などがあれば、いつ死亡するかわかりません。
- まだまだ元気なのだからそのうち書けばいいと思いながら何年も経ってしまう。
- 現金は平等に分けることができても、不動産は等分に分けることはむずかしい。
- 親は子どもたちを平等に育てたつもりでも、子供は必ずしもそうは思っていない。
- 同じように育っても、成人してからの境遇が大きく異なることがある。
- 法律では「家(家制度)」など無視するが、まだ一般には「家・跡継ぎ」は重要なことがある。
というようなこともあるので、相続・遺産分割協議がスムーズに進まない要因はたくさんあります。まして、
「親は子どもたちを平等に育てたつもりでも、子供は必ずしもそうは思っていない」
「同じように育っても、成人してからの境遇が大きく異なることがある」
というのは、親と子では異なったとらえ方をしているかもしれません。
どういう遺言書を作るのか
そこで、遺言書を作成するとどうなるかですが、絶対に遺言書どおりになるとはかぎりません。しかし、遺言書の内容が遺産分割(遺産分割協議という相続手続き)で優先されることは間違いありません。また遺言執行者を指定しておくとよい場合もあります。
通常は、「揉めないように、遺言書で指示をする。」のですが、相続人が遺言書の内容に納得しなければ、兄弟姉妹で直接に揉めることは少ないとしても、仲良くお付き合いができるでしょうか。
また、被相続人も、自分の子供たちがどんな理由で不仲になるのか的確に予測ができるでしょうか。
そんな場合に備えて、少なくとも、遺言書の内容を決めた理由を「遺言の付言事項」として書いておくとよいと思います。
川崎市中原区の彩行政書士事務所では、そのような遺言書のお手伝いをいたします。