遺産分割協議が難しくなる場合とは
どなたかがなくなると自動的に「相続開始」となります。その後、遺産分割協議をすることになります。遺産分割協議は、全員が一同に会したり、議長がいたりする必要はありません。誰かが作成した遺産分割協議書を順番に回して、署名押印するだけでもよいのです。遺産分割協議書が法定の事項を満たしていて、それでみんなが納得し円満にいられるなら、何も問題はありません。その場合でも、行政書士に遺産分割協議書を体裁よく作ってほしいという依頼をいただくこともあります。
などということもよくあります。遺産分割協議・遺産分割協議書の作成で手間取っていては大抵良いことにはなりません。なんとか円満に進めたいものです。
遺産分割協議と行政書士
遺産分割協議は、普通は当事者(相続人)だけでするようです。行政書士や税理士が同席するとスムーズに進むこともあります。一種の司会進行役だと思っていただければよいでしょう。
「忌憚のない意見を・・・」と言われたからといって、本当にズケズケ言ってはまずいかもしれません。かといって、黙っていては後々困るでしょう。
そこで、司会役の行政書士などが、各相続人の意見を集め、法的妥当性をアドバイスをすることもできます。しかし口数の多い人、少ない人がいますし、考えるのに時間がほしいという慎重な人もいますので、その点は十分考慮してください。
顔を合わせるとすぐに喧嘩になるという場合もありますから、他の相続人の前で言いにくいことがあるなら、遺産分割協議の会合を設定せず、行政書士が各相続人とひとりずつ対面して事情を集めることもできます。集めた情報を元に、行政書士が遺産分割協議書の案を作成すれば、極力「カド」の立たない方法で進められます。
行政書士としては、気分を害する人がでないように気を遣うところです。
「本心は△△なのだけれども、他の相続人に言ってもいいだろうか」と相談されることもあります。「良い・悪い」と決め付けるわけにはいきませんが、いろいろな方法で打診はできると思います。
通常は、このように相続人だけ、あるいは相続人と第三者的な行政書士だけで遺産分割協議をします。各相続人の配偶者などは一切入らないのが原則でしょう。
遺産分割協議と配偶者
相続人の配偶者は相続人ではないことがほとんどです。Aさんが亡くなって、長男のBさんと次男のCさんが相続人なら、Bさんの妻とCさんの妻は、相続とは無関係です。(Bさん、Cさんが離婚することになった場合、この遺産相続で得た財産は財産分与の対象にはなりません。)
通常、Bさんの妻とCさんの妻は遺産分割協議に参加もしませんし、それぞれの家庭内でも意見も言わない方がよいとされているようです。しかし、Bさんの妻もCさんの妻も、自分の夫がどれくらいの遺産をもらえるのか、その遺産の配分は公平なのかは気になるでしょう。気になっても何も意見を言わない方がよい、という人が多いです。
まれに、配偶者が遺産分割協議の場に出席することで、その相続人たちの置かれた状況・立場がよく分かることがあります。それまで、親から受けた援助が多いのか少ないのか、自分の夫がどの程度親や兄弟に迷惑をかけたのかがわかるから、参加させた方がよいという考え方です。
冷静に話し合いが進めばよいのですが、相続人とその配偶者の参加した遺産分割協議で、誰かが感情的になったり、理不尽なことを言い出したり、罵ったりし始めたら、これはもう大変です。取り返しがつかないというほど揉めるでしょう。遺産分割協議が紛糾するだけでなく、兄弟姉妹・親戚付き合いもなくなってしまうかもしれません。そういうケースは少なくありませんから、くれぐれもお気をつけください。
兄弟姉妹の仲
上に挙げた以外に、遺産分割協議が難しくなる要因はたくさんあります。相続人である兄弟姉妹がもともと仲が悪いということもあります。
片親が異なるために、遺産分割協議までほとんど(あるいは、まったく)交流がないという兄弟姉妹もいます。
子供が数人いると、気の合う子と合わない子もいるでしょう。気の合う子に老後の面倒を看てもらうと、その子には多くの財産をあげるという遺言書があるかもしれません。
仕事などの都合で、気の合わない子に世話をしてもらったとすると、生前からいろいろと問題が生じた可能性があります。親と息子が同居していて、実際に親の世話したのがその息子の妻だった場合にも、考慮すべきことがたくさんあるでしょう。
そういう点を遺産分割にうまく反映できるでしょうか。これは法律上の判断というより、相続人の皆さんで判断してもらうのが一番よいでしょう。どうしても結論が出なければ裁判所ということになります。訴訟に備えて早くから準備していたという事情でもないかぎり、意外とありきたりの結論のことが多いようです。
こういう結果になるのなら、裁判はしないほうがみんなにとってよかったのにと思う人もおられますし、いろいろデメリットもあるものの、裁判できちんと結論がでてすっきりしたという人もおられます。いずれにしても「いきなり裁判所」という人はいないでしょうから、まずはご相談ください。必要なら弁護士事務所をご紹介します。