遺書と遺言書の区別が曖昧だったりすることがありますが、遺言書の内容についての誤解も多いと思います。
遺言書についての誤解
以下の項目で遺言書について誤解しているものはいくつあるでしょうか。
- 遺言書には、遺言執行者を指定しておかなければならない。
- ある財産について遺言書で指定しまうと、遺言書を訂正してからでないとその財産を売却できない。
- 遺言書に記載したことは、子供たちが反対しても裁判所等が遺言書どおりに手続きする。
- 養子に行った子は、遺言書で相続分を指定しないと何も相続しない。
- 遺言書に明記すれば、兄弟姉妹が遺留分を主張しても遺産をまったくあげないことができる。
- 子がなく、親も死亡していれば、配偶者がすべての財産を相続する。
- 法定相続人であっても、遺言書でその人を廃除すると明記してあれば、その人は遺産をもらえない。
- 遺言書で相続人全員の相続分割合を指定してあれば、遺留分の主張はできない。
- 遺言書で「海に散骨すること」と指定すれば、遺族たちは樹木葬にはできない。
- 長男に全財産を相続させると遺言書に書いてあるが、遺言書が死亡する前に長男が死亡していれば、長男の子が全財産を相続する。
- 土地は長男に相続させるが、長男が死亡した後は、その土地を長女が相続するように指示しておく。
- 不良少年だった長男が、もし真面目に働くようになれば、遺産の3分の2を相続させる。
- 隠し金庫の場所や暗証番号などは遺言書に書けない。
遺言書の誤解についての解説
上の項目は遺言書に関してすべて間違っています。細かい解説は他のページ等を参照していただくとして、簡単な解説だけをしておきます。
- 遺言書には、遺言執行者を指定しておかなければならない。:遺言書に書いてなくても、必要であれば相続開始後に選任できます。
- ある財産について遺言書で指定しまうと、遺言書を訂正してからでないとその財産を売却できない。:「神奈川県川崎市高津区にある私の土地は、長男に相属させる。」と書いてあっても、相続開始時にその土地がなければ、この土地について何も遺言しなかったのと同じです。
- 遺言書に記載しておけば、子供たちが反対しても裁判所等が遺言書どおりに手続きする。:役所等が自動的にやってくれることはありません。
- 養子に行った子は、遺言書で相続分を指定しないと何も相続しない。:普通養子は法定相続人です。したがって、遺産分割協議にも参加します。もっとも、「参加」の仕方はさまざまです。
- 遺言書に明記すれば、兄弟姉妹が遺留分を主張しても遺産をまったくあげないことができる。:兄弟姉妹に遺留分は認めないと書いても構いませんが、そもそも兄弟姉妹に遺留分はありません。
- 子がなく、親も死亡していれば、配偶者がすべての財産を相続する。:孫・ひ孫・祖父母・兄弟姉妹がいるかどうかなどを検討します。配偶者が全部を相続するとは限りません。
- 法定相続人であっても、遺言書でその人を廃除すると明記してあれば、その人は遺産をもらえない。:廃除は遺言執行者が裁判所に申し立て、裁判所がが決めます。一般には、廃除が認められることはないと思っていたほうが無難でしょう。
- 遺言書で相続人全員の相続分割合を指定してあれば、遺留分の主張はできない。:遺留分を剥奪することはできません。条件が整えば主張できます。
- 遺言書で「海に散骨すること」と指定すれば、遺族たちは樹木葬にはできない。:葬儀の方法を指定しても法的な効力はありません。「お願い」の効果はあるでしょう。
- 長男に全財産を相続させると遺言書に書いてあるが、遺言書が死亡する前に長男が死亡していれば、長男の子が全財産を相続する。:相続開始前に死亡した人について自動的に代襲相続することはありません。そういう場合、予備的遺言・補充遺言をしましょう。
- 土地は長男に相続させるが、長男が死亡した後は、その土地は長女が相続するように指示しておく。:長男が相続したものは長男のものなので、どのように使うかは長男が決めます。ただ、このように書いてあれば「お願い」の効果はあるでしょう。
- 不良少年だった長男が、もし真面目に働くようになれば、遺産の3分の2を相続させる。:いつの時点で、どのくらい真面目なのかがわかりません。曖昧なので効力のない文言でしょう。
- 隠し金庫の場所や暗証番号などは遺言書に書けない。:法的効果とは関係ありませんが、書いておくと役に立つかもしれません。
遺言書には書きたいことを書くとしても
遺言書に記載しても無効な(法的効力が生じない)事項はありますが、書いたからといって罰則はありませんので、遺言者の望んでいることは「とにかく書いておこう。無効になってしまったら仕方がない。」というくらいのつもりで、列記してみるとよいと思います。
- 「不良少年だった長男が、もし真面目に働くようになれば、・・・」とか
- 「長男の相続分は、長男がきちんと職に就くまで、叔父の△△氏が管理する。」
- 「最後まで、私の世話をしてくれた人に、3分の2の財産を相続させる。」
というようなお気持ちはわかります。もしかすると、この遺言書で最も重要な部分かもしれません。しかし、このような指定は無効になる可能性が高いので、せっかく遺言書を作成した意味がなくなってしまうかもしれません。
何を書いても構わないとはいえ、「良かれと思って付け加えた文言のせいで、遺言書全部あるいは遺言書の大部分が無効になるようなことは避けたいものです。専門家に相談することをお勧めします。
川崎市中原区の行政書士
面談はご予約いただき、武蔵小杉・元住吉でおこなっていますが、相続相談・遺言書相談の場合に面談室までお越しいただくのが大変だとか、資料等が多いという場合は出張もできます。また、先に息子さん・娘さんなどだけが相談に来られて、後日、その相談内容と結果をご本人に確認いただく方法もあります。
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