遺言書が必要な場合
誰でも必ず遺言書を作成したほうがよいということはないと思います。たとえば、遺産を法定相続人が遺産分割協議で納得して、あるいは相続人が法定相続分にしたがって相続しそうであれば、財産についての遺言は不要のことが多いです。
ただ、法定相続人以外の人に財産をあげたいとか、遺言書で認知などをすることもあるので、それなら遺言書は必要です。
遺言書には何を書いてもよいのですが、法的な効力のある事項は決まっています。法定遺言事項です。参考までに、このページの最後に法定遺言事項を記載しておきます。
本人の意に沿わない遺言書
本人の意思に沿わない遺言書ができあがることがあります。自筆証書遺言のことが多いですが、そうともかぎりません。
- だまされた
- 頼み込まれた
- 無理強いされた
というような事情でだと思いますが、これらの事情の判断は難しそうです。
「無理やり書かされた」というタイトルにしましたが、もちろん「力ずくで」ということではありません。例として上にいくつか挙げましたが、どういう状態が「無理やり書かされた」ということになるのか、非常に判断に困るでしょう。
物事の判断力がない精神状態では有効な遺言書は書けません。
無理強いされたなら取り消すこともますし、新たな遺言書を作成すれば、その無理強いされて作成した遺言書は役に立ちません。
- お世辞を言われて良い気分になり、その人の利益になるような遺言書を書いたり、
- 誰かの有利になるような遺言書を書かないと、病気になったときに面倒を見てあげないと言われたり、
という場合には、これも判断が難しいと思いますが、相続開始後、その遺言書が有効になる可能性が高いと思います。
遺言書があれば、原則として遺産分割協議の内容よりも優先されます。
強迫によって書かれた遺言書は、遺言者の死後、相続人が「取消権」をもっていることになっていますが、実際にどうなるかは複雑でしょう。
遺言書作成の経緯や内容に疑義があれば、まずは相続人の間で相談し、解決しなければ家庭裁判所の調停をします。それでも解決しなければ訴訟です。
無理やり書かせたら
強迫によって遺言をさせた人は、その遺言者に関しての相続人(または受遺者)となることができない(民法891条、965条)のですが、実際にどう適用されるかとなると微妙だと思います。上にも書きましたが、「無理やり」の意味がはっきりしないことのほうが多いからです。【参照:相続欠格】
以上のようなことがあるので、遺言書は安易に書かないで、専門家にご相談ください。
だまされたり、無理やり書かされたわけでなくても、不公平な遺言書はたくさんあります。【参照:同居の子と遺言書】
第三者である専門家としては、よほど事情が明らかでないかぎり「あなたは騙されているのではないか。」とか「相続人の△△さんは信用できますか。」などと言うことはできません。家族・親子・兄弟姉妹の間でそれぞれの歴史がありますから、その点も踏まえてお話しいただければよい遺言書になると思います。【参照:老後のための遺言】
財産に関して遺言書で有効な事項
遺言書には何を書いても構いませんが、法的に有効になる「法定遺言事項」は決められています。以下、列挙します。まず、財産関係の事項です。
- 祭祀主催者の指定(民法897条1項ただし書)
- 相続分の指定・指定の委託(民法902条)
- 特別受益の持戻しの免除(民法903条)
- 遺産分割方法の指定・指定の委託(民法908条)
- 遺産分割の禁止(民法908条)
- 相続人相互間の担保責任の指定(民法914条)
- 遺贈(民法964条)
- 遺言執行者の指定・指定委託(民法1006条)
- 遺贈の減殺割合の指定(民法1034条ただし書)
- 生命保険受取人の変更(保険法44条1項、73条)
- 信託の設定(信託法3条2号)
- 一般財団法人の設立・財産の拠出(一般法人法152条2項、162条2項)
身分関係について遺言書で有効な記載事項
法定遺言事項のうち、身分関係についての事項です。
- 遺言認知(民法781条2項)
- 未成年後見人の指定・未成年後見監督人の指定(民法839条1項、848条)
- 推定相続人の遺言廃除・取消し(民法893条、894条)
川崎市の行政書士事務所
彩行政書士事務所の業務はほとんど全国対応していますが、一度は面談してお話を伺うと、「ニュアンス」が伝わりやすいです。「基本的にはこう考えているが、場合によっては、他の方法でもよい。」「すべての子に公平ではなくなってしまうが、生活に困っている子がいる。」というような揺れる気持ちがあるときは、特に面談をお勧めします。
川崎市中原区、武蔵小杉・元住吉の行政書士ですから、アクセスは便利です。場合によっては、出張もいたします。