遺言書の書き方
遺言書が遺言として正式に成立するためには、方式が規定に則っていなければなりません。遺言書は内容が難しいですが、それ以前にまず方式が重要ですから、遺言書の書き方・作成方法がよく紹介されています。
方式が違反しているとその遺言書が無効になることも珍しくありません。その場合、遺言書としては無効でも、遺言書のつもりで作成したものが「死因贈与」として有効なことがあります。
死因贈与と遺贈
死因贈与とは、贈与する契約ですが、贈与する人が死亡したときに「贈与」の効力が生じるものです。別の言い方をすると、「自分が生きている間は、あげない」ということなのだと思います。その理由はさまざまでしょう。
遺言書で、法定相続人でない人にでも「誰々に何々をあげる」と書いておけば遺言としては有効にできます。これは、もらう人の意向には関係なく、遺言書で一方的に「あげる」と書いて構いません。【特定遺贈】のページもご参照ください。
一方、死因贈与は契約ですから、あげる人・もらう人の意向が一致していなければなりません。つまり契約の条件を満たしている必要があります。
「契約」は法律知識の基本ですが、一般の方の抱いているイメージと異なる部分がありますから、契約・契約書の問題は、一度専門家にご相談ください。
死因贈与契約の実例
離婚・養育費・財産分与・相続関係・遺産分割等で使われることが多いでしょう。
不動産に関しての死因贈与契約の場合、このメリットがわかりやすいかもしれません。
「自分が生きているうちはその不動産をあげない」のですから、
- 1,自分の現在の生活(たとえば老後の生活)に必要である
- 2,離婚する妻にはあげたくないが、財産分与・養育費の関係で、自分の死後、妻に引き取られた子に「直接に」あげるならよい
- 3,自分が生きているうちには推定相続人に使わせないが、推定相続人の誰に相続させるかをはっきりさせておきたい
という場合に使うとよいかもしれません。
特に、上の3は、遺言書とも深い関係があります。
遺言書ではなく死因贈与契約
遺言書は、作成したことを誰にも知られないようにしておくこともできますし、書いた後、作りなおすこともできます。推定相続人は、「不動産をあなたにあげる」という内容の遺言書を見せられたとしても、相続開始時に本当にそうなるかどうかはわからないのですが、死因贈与契約では不動産を仮登記できますから、登記簿に公示されます。「あげる人ともらう人との契約」であることの重要さが、こういう点ではっきりと現れます。
このような登記・仮登記は専門家にとっては「朝飯前」というくらいに簡単です。あげる人ともらう人がそろって依頼すれば簡単にできますが、だからこそ手続きは慎重にしてください。「遺言書は難しい」「法的手続きに至るまでの過程が重要」であるということを心に留めておいてください。
なお、
- 死因贈与はできるかぎり「遺贈」と同様に扱うということになっています。
- 遺留分減殺請求の問題も生じ得ます。
老後のための遺言と死因贈与
年老いてくると、療養看護は誰がしてくれるのかが心配でしょう。
- 配偶者も年をとっていたり、既に他界していたりします。
- 子供たちがいるとしても、仕事が忙しかったりします。
- 相続人である子供たちの配偶者はもともと他人ですし、仲良く暮らしてきたかどうかも人さまざまでしょう。さらに、
- 子供たちそれぞれとの相性もあり、気の合う子と合わない子がいるかもしれません。
- 子供にかけた学費等の費用も違うのが普通です。
- ある子は立身出世し、ある子は失業していたり、病気になっていたりするかもしれません。
- 子供たち同士でも、仲が良かったり悪かったりします。
推定相続人である子供たちに、どのように相続させるかを遺言書ではなく死因贈与契約で指定するということは、おそらく相続関係の協議で何らかの問題が生じることが予想され、それを遺言書で書いただけでは信用できないという深刻な状態なのではないでしょうか。
そういうケースで死因贈与と仮登記をすれば、場合によってはその時点で親子関係も、子供同士の親戚関係も断絶します。
不動産を特定の相続人に集中させて家業を継続させるなど、死因贈与契約をする方がよい場合もあるでしょうが、それなら他の相続人に対する手当ても十分にしておかなければなりません。その場合はおそらく他の相続人などに対しても契約書などで権利関係を確実なものにしておかなければならないでしょう。また、しっかりと話し合いをした上で、信頼関係が保たれていれば理想的です。
死因贈与の危険性
単に、親不孝な子に財産をあげないのなら、そういう内容を記した遺言書を作って、財産をあげる子に渡しておけば済むことです。
それなのに、死因贈与契約(および仮登記)をするということはよほどのことだと思います。
無闇に法律を振り回すととんでもないことになります。後から修復できない傷になりますから、それだけの注意と覚悟をもって臨んでください。
以上のようなわけで、彩行政書士事務所のホームページでは、一般の人が知らない方がよいと思うことは書かないこともよくあります。しかし、ネットでそのような情報が氾濫し、検索すれば大勢の目に触れますので、むしろ積極的に書いた方がよいのかもしれません。
医薬品ですと、医師の処方箋がなければ購入できない薬がたくさんあります。また、ほんの些細な「おでき」を切り取っても、人の体に傷をつければ犯罪です。
法律も危険な法律がたくさんあるのですが、法律は基本的には、大人であれば誰でも自分の判断で使えます。弁護士に依頼しなくてもよいのです。本人が法律を使用するのは「権利」ですが、その責任を取る「義務」も生じます。その義務とは「人生を台無しにするほど危険」なことがあります。素人が「おでき」を切り取るのとは桁違いに危険なこともあると思います。
川崎市、武蔵小杉の行政書士ですが
そのために、彩行政書士事務所では、必要があれば十分な時間をとって面談し、事情をうかがうことがあります。場合によっては、業務をお断りすることもありますし、しかるべき専門家を紹介することもあります。
東横線・南武線をご利用の方、武蔵小杉・日吉・武蔵溝ノ口・登戸などの各駅をご利用の方にはとても便利ですし、出張・時間外・土日祝祭日のできるかぎり対応しますので、是非一度は専門家にご相談ください。
行政書士の業務範囲は非常に広いので、たいていは得意な分野とそうでない分野があります。
なるべく近所の行政書士に依頼するのが得策な場合もありますし、たとえ遠方でも彩行政書士事務所に依頼する方がよい場合もあるかもしれません。
相続も遺言書も、一生のうちに何度も経験するようなことではないでしょうから、満足できるように、後悔しなくて済むようにお手伝いしたいと考えています。