家系図

家制度がないのに

家制度がなくなった現在、「家系図」を作る意味があるのでしょうか?

洋の東西を問わず、家柄というのは封建時代には特に重要でした。今や世襲制度は建前上はほとんどなくなったものの、現実には、企業、政治家、家元、芸能人など、親から受け継いでいく例は多くあります。

また、先祖を明らかにされることによって、不利益を受けたり、優遇を受けたりすることがあるので、一切抹消すべきとする人もいるようです。

安らぎを求めて

しかし、「自分の親の親の、さらにその先の先祖はどんな人なのだろう」という気持ちは、世界共通のもののようです。西洋でも自分の祖先への関心は大変高いそうです。

また、戸籍をたどると、漁師さんとして海で亡くなっていたり、出征して遠い地で戦死していたり、ということがわかることがあります。

祖先をまつるという信仰はともかく、自分の出自を知って、「安らぎ」を感じる人が多いようなのです。現在、自分に「生」があるのは、祖先がいたからであることは間違いありません。

家系図を人に見せるか見せないかは自分で判断していただくとして、家系図を作るお手伝いは、むしろ行政書士が積極的に受任するべきではないかと考えます。

川崎 戸籍 行政書士

家系図作成をお手伝いします

家系の最古の記録は5世紀頃、有名氏族のものは9世紀頃だそうです。江戸時代にはかなり大規模になると同時に、偽造も増え、そして真偽の鑑定人までいたそうです。これは日本に限らず世界中にあったようです。

武家・公家にとっては血統が重要であり、庶民としては家業を継いでいくために必要でした。これは現在でも、たとえ日本国の法が変わろうとも、多くの人の心の中にはあるでしょう。何代もさかのぼっても、特別な情報が集まらないとしても、名前や住所を知るだけで結構満足なさる方がいるのです。

戸籍があっても閲覧できない事項

自分からみて、直接に血のつながりのある祖先(直系尊属)は、自由に調べることができます。婚姻関係による祖先は関係者の協力を得て調べますが、これをやりはじめると膨大な量になります。

戸籍にも変遷があって、ある時代のものは病歴・犯罪歴・身分が載っているので、この部分は隠されていて知ることはできません。
祖父母などが亡くなられたのがかなり前であれば、相続手続きで戸籍謄本を取寄せてあるのではないでしょうか。

もし、そのとき行政書士等に手続きを依頼していれば、相続関係書類としてひとまとめにして渡されたのではないかと思います。もしかすると、その当時の書類は、まだ記載事項を削除されたり黒塗りにされていないものかもしれません。機会があれば探してみてください。

いつの戸籍までたどれるか

現行の戸籍制度が明治5年からですから、幕末くらいまでの祖先は資料として残っているはずなのですが、当初、ほとんどの戸籍が50年間保存とされていました。その後80年となり、現在のコンピューター化されたものは150年です。
もっとも、火災等で失われてしまったものもあります。極力、復元されているのですが、古いものは復元のしようがなく、あきらめるしかありません。

法的な意味は薄いですが、戸籍が古くて破棄されたとか、災害等で滅失した場合、関係者の聞き取り調査などで、家系図の作成は可能かもしれません。かえっていろいろな人の話が聞けるので、すばらしい祖先捜しになるかもしれません。

家系図の様式

家系図にもいろいろな書き方・まとめ方があります。

  • 古い世代を一番上にして、その下に子の世代・・・というように縦に記述するのがもっとも見やすいでしょう。掛け軸などにする場合にはこの方式ですが、あまりたくさん書けないのが難点です。
  • 古い世代を一番右にして、その左に子の世代をひとまとめに・・・というように横に記述する方法があります。巻物式にすることができ、かなり長く書けます。しかし、見にくい・全体を一覧できないという不便があります。

家系図の装丁など

家系がわかるだけでよいのか、それとも装飾品にしたいのかもお考えください。
家系がわかるだけでよいなら、大きな紙に書いておけばよく、これを自分の子孫に渡せば、引き継ぐことは簡単です。
掛け軸などにするとなると、専門の装丁職人の技術が必要です。また筆で書くならそれなりの達筆な方にお願いしなければなりません。

パソコンの使用

  • パソコンを使用すれば大抵はきれいですが、古い女性の名前には、よく変体仮名(「ゑ、ゐ」のようなもの)が使われており、同じ文字にもバラエティがあります。パソコンで書くどころか、読めない・手書きでも書けないという文字があります。パソコンでも工夫次第でかなり正確に入力できますが、確実ではありません。
  • パソコンはもともと横に文字を書くのは簡単ですが、縦はあまり得意ではありません。家系図を横書きにしてもかまいませんが、これは掛け軸には不向きでしょう。また、その場合のパソコンソフトはある程度、特殊なソフトを用いることが多いのです。
  • 時代の経過と共に、そのパソコンソフトも当初のデータファイルもたいてい使えなくなります。せっかくパソコンで書いても、自分の子孫に、そのデータを引き継いでもらうのは困難でしょう。それなら、初めから手書きをお勧めします。

家系図は一代限り

家系は先祖とのつながりを示すもので、いつまでも引き継がれますが、家系図は一代限りだとお考えください。つまり、自分が作った家系図を子供に渡して、子供がさらに名前を付け加えて、最新の家系図としておこうと考えない方がよいでしょう。

付け足すことはできないのです。筆記具、インク、用紙等、同じものを使って、付け足していくのは非常に困難です。
しかし、資料は付け足していけばよいことです。古い戸籍はいずれ入手できなくなりますから、なるべく早いうちから集めましょう。

家系図のかたち・装丁など

  • 掛軸
    これがもっとも見栄えがよいでしょう。しかし、紙面に制限がありますから大勢の祖先を書くのは困難です。
  • 巻物
    掛軸に比べるとはるかに多くの祖先を記入できます。しかし、何代かを上下に描いて、それより下の世代は、どんどん左のスペースにかいていくことになります。見やすいとはいえません。巻物とはいえ、たくさん巻けば太くなりますから、いくらでも書けるものではありません。
  • 折本
    ノート型ですが、「巻物」を蛇腹に折りたたんだものです。巻物よりもっとたくさんの資料をつけられます。巻頭や途中に、掛軸型の図を入れるなど、融通もききます。途中でその人物の資料集をつけてもいいでしょう。
  • 資料集
    掛軸、巻物、折本とも、ある意味で美術品でもありますから、高度な技術が必要です。ほとんどの人は自分では作れないでしょう。そこで、先祖について調べたいなら資料集を作ることをお勧めします。

資料集

祖先のどんな情報を集めたいのかを決めて、資料集としてまとめればよいのではないでしょうか。
おそらく先祖のなかにも、目立つ人と目立たない人がおられると思います。ところどころに掛軸型の家系図を入れ、目立つ人の情報は情報集として挿入することもできます。「資料集としての家系図」「家系図プラス資料集」です。
これでしたら、子供に渡して、子供はまた自分で付け足しても不自然ではありません。
戸籍が廃棄される前に集めて、まとめて、それを子孫に渡していってはいかがでしょうか。

祖先 家系図 川崎

家宝は散逸するので

家によっては、ご先祖が殿様からいただいた掛軸とか茶碗や絵画などを代々受け継いでいるようです。「おじいさんの写真」などがある家も多いでしょう。しかし、たったひとつの品ですから、兄弟姉妹が何人もいれば、ひとりしか受け継ぐことができません。形見分けしてしまうと、どんどん散逸します。家督制度がなくなったのですから、いつか、祖先のこともわからなくなるでしょう。だから家系図くらいは作ってみてもよいのではないでしょうか。

家宝の相続

法律上、家制度がなくなったとはいえ、現実にはまだまだ残っています。親から家を受け継ぐ人が家宝も受け継ぐとか、墓を受け継ぐ人が家宝も受け継ぐ、長男が受け継ぐ、などいろいろあります。

長男が受け継ぐことにしたけれども、長男が実家を離れ、東京へ転居した場合など、受け継ぎ方に問題が生じます。
また、この家宝の分け方で意見の相違が生じることもあります。こういう場合の相続問題を考えて、やはり遺言・遺言書を作ることが大切だと思います。

祖先を失っていく

上に書きましたように、ある意味で私たちは徐々に祖先を失っていきます。わからなくなっていくのです。
「人間はひとりで生まれて、ひとりで死んでいく」といってしまえばそれまでですが、だからこそ、「祖先捜し」は世界中の人々の関心事なのかもしれません。

「自分がどこから来たか」という家系図、そして「自分がどこへ行くのか」という遺言書、どちらも意義あることではないでしょうか。
家系図作成のお手伝いが終わると、依頼者さんがたいへん嬉しそうなのが印象的です。