家督相続制度廃止
ご存じのように家督相続はずっと昔に廃止されましたが、今でもみんなの心の中からもなくなったわけではなさそうです。「弟が跡継ぎをしています」とか「跡取り息子」ということは、今でも聞きます。住む地域や年代によってかなり違いますが、それでも結構ある話です。「跡取り」「跡継ぎ」については【跡継ぎ】をご参照ください。
戸主には、家を統括するための特別な権利と義務がありました。これを戸主権(厳密には、家父長権と戸主権は別のようですが)といい、家督相続とは、この戸主権の承継と考えて差し支えないでしょう。
財産をすべてもらえるというイメージがありますが、家族等を扶養する義務や保証人・後見人となる義務がありました。たとえば弟などが起業するとなればかなりの資金を出したのでしょう。事業に失敗して多大の負債を抱えるということになると、戸主はその後始末もしなければなりません。今では、この義務について考慮されないので、不公平感が強くなるのではないでしょうか。
とにかく、家督相続という制度のなくなった現在、死亡した人の遺産をどうするかが問題です。個人主義を貫いて、誰のものにもしないという考えもなり立つかもしれません。その結果、国庫に帰属させるとか、あるいは、相続税を9割にする(もし遺産が1000万円なら、900万円を税金として納入する)とよいという人もいます。
遺産はどうなるのか
長男にすべてを相続させるという考え方も薄れて、老後の面倒をみてくれた子にほとんどの財産を渡したいという人もおられます。ということは、長男だから責任や義務があって、親の老後の世話も長男がしなければならないというわけでもないのでしょう。
しかし、とにかく子供たちには平等に分け与えたいという人もいます。
法的には、自分の財産は自分が自由にできるという考え方がありますから、生前はもちろん、自分の死後についても財産をどうするか決めておくことができるという説、さらに一歩進んで、自分の財産を遺言(遺言書)で決めておくべきであるという説もあります。
相続と遺言の実務
しかし、遺言書のない場合が非常に多いです。
遺産分割協議がなかなか進まない場合は、ほとんど親子・兄弟姉妹の人間関係が影響しています。
法定相続分で遺産分割したくても、なかなか均分には分けられません。現金は簡単なのですが、不動産・動産の確定と評価、分割方法は困難です。特に現金と動産は誰がどこに保管しているのかわからなくなります。また、生前に誰かが特別に財産をもらっていたことなど、遺産分割協議で問題になることがよくあります。