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実印は大切に
相続の手続などで、
「印鑑登録証明書を他の相続人(親や兄弟姉妹)に渡したくないのですが・・・。」
「実印を押して大丈夫でしょうか?」
とおっしゃる方は結構多いです。不正使用を心配なさるのです。
車を買うときとか、賃貸マンションに入居するときに実印を押したり、印鑑証明書を相手に渡す機会は結構ありますが、それが不安でたまらないという人はあまりいないと思います。
しかし、相続ではそれを心配する方がおられます。
いう言うまでもないことですが、
「白い紙があったから、実印を押してみた。そして
何も書いていない紙だから、そのままデスクの上に置いてきた。」
というような実印の扱いをする人はいないでしょう。
実印は印鑑証明(印鑑登録証明書)よりも重要だと思うのですが、もし偽造するなら印鑑証明書より、実印(ハンコ)の偽造のほうが簡単な気がしますがどうでしょうか? このようなものがそんなに重要とは困ったことだと思います。
戸籍謄本・印鑑証明書を紛失すると
自分の戸籍謄本を破りもせずに道路に投げ捨ててきたとしても、それでその人の財産が盗られるわけではありません。
印鑑登録証明書を道路に投げ捨ててきても、それですぐに犯罪が起きるわけでもありません。
何も書いていない紙に実印を押して、そのままどいこかに置いてきて、
さらに、その実印の印鑑登録証明書を拾った人がいても何も起こらないのが本来です。
しかし、実印を押してある紙と、印鑑登録証明書を拾った人が悪人で、ある程度の犯罪知識があれば、この実印の持ち主にとって不利なことが起こるかもしれません。
実印をめぐって生じる犯罪
上に書きましたように、犯罪が起きるには最低でも3つの条件が必要と思われます。
- 実印が押せる(押してある)
- 印鑑登録証明書がある
- 悪事をたくらみ、実行する知識のある人の手に渡る
「実印を押す」ことについては、だまして押させることも考えられます。偽造という行為は、その完成度にもよりますが、素人にはなかなか難しいと思います。
自動車運転免許証、パスポートの偽造まであるのですから、印鑑証明書の偽造も可能なのでしょうが、かなり難しい作業であることは間違いありません。
相続関係手続きで不正はあるのか
相続人の中に、偽造などができそうな人がいるでしょうか。相続人が、その道のプロに依頼して偽造書類を作成してもらえば可能でしょうが、現実的でしょうか。心当たりはありますか。
あわよくば、インチキして遺産をだまし取りたいと思う人はいるのかもしれませんが、実行・実現は普通の人にはかなり困難なはずです。
重要なのは、印鑑証明を人に渡さないことではなく、実印を押すときには気をつけるということでしょう。大至急、その場で実印を押さなければならない書類はないでしょうから、よく読んで、心配なら記載内容について専門家に相談してからにするとよいと思います。
遺産分割協議
遺産分割協議書作成や相続関係手続きの際に、自分以外の相続人に印鑑登録証明書を渡したくない、という人が結構大勢おられます。印鑑登録証明書を渡せば、それを悪用して不正手続きをする可能性があるからというのが理由です。誰かがそう言い出した時点で、遺産分割協議の雰囲気が悪くなります。こういうやり方をすると社会生活が成り立ちません。
個人情報
日本人は、住所・電話番号・生年月日などを隠したがる傾向が強いという調査結果があるそうです。この調査がどこまで当てになるかはわかりませんが、一般に、個人情報を秘密にすると、一面では安全性が高まりますが、他方では、自分の正当な権利行使をはばまれて、結局、損をする、泣き寝入りをすることも多くなります。
- 大切な個人情報だとされているのに、頻繁に使われているのが、自動車運転免許証です。結構あちこちで提示していませんか。コピーもされているでしょう。
- 印鑑登録証明書は、自動車購入の時に何通もディーラーさんに預けます。
- 賃貸マンションに入居するとき、保証人の印鑑証明書をつけることはよくあります。実印も押します。
- マイナンバーは職場や金融機関に提出します。
自分の情報が人に知られなければ、自分が被害に遭うことは少なくなるでしょう。しかし、自分の情報が人に知られない制度なわけですから、人の情報を自分が知ることもできなくなるわけです。
そうすると、自分が被害者の立場になったとき、調査ができなくなったり、証拠集めも難しくなります。
一方、悪事をはたらいた人は責任追及がされにくくなります。自分の権利・利益を守ろうとする人にとっては証拠集めが難しくなり、権利の回復がしにくくなるでしょう。
また、率先して自分の情報を与える人もいます。
- 買物をするとポイントが貯まる会員カードなどの作成のときには、住所氏名はもちろんですが、電話番号もメールアドレスも、生年月日も知らせます。こういう会員カードをたくさん持っていれば、たくさん情報提供していることになります。
- 謝礼やポイントが貰えるというようなアンケートに答えていませんか。これは職業、家族構成、年収、持ち家かどうかなどの情報もたくさん提供していることがあります。
これらは、プライバシー保護がされていることになっていますが、たびたび情報漏れ(の事故)があることと、法令を順守しない悪質な企業もあることを考えると、個人情報はかなり漏れていると思います。
しかし、その情報によって実際に損害を受けた例がどれくらいあるかというとよくわかりません。あるにはあるはずですが、情報が漏れるとすぐに損害を受けるというわけではなさそうです。
「ベネッセ個人情報流出事件」とよばれる事件では、子供や保護者の氏名、住所、電話番号、性別、生年月日などが流出したそうです。お詫びとして500円分の図書カードが送られたそうです。昼食を1回も食べられないくらいの額です。
しかし、多分、被害といえば「営業電話がかかってくるようになった」という程度と聞いています。事件発覚後、何年経っても営業電話がかかってくるという噂を耳にしました。
ストーカー問題のようなものは別として、相続手続きにおいて、印鑑証明書を渡すとか、戸籍謄本・住民票を渡すとか、その他のものを渡して個人情報が知られることはあると思いますが、とりあえず実印を渡さなければ(押さなければ)、不正・犯罪につながることは少ないと思います。(相続人の誰かに印鑑証明書を渡すことはあっても、実印を渡す人はいないでしょうし、「あなたの実印を自分に預けてほしい。」と言われることもないでしょう。)
相続人の悪事
相続関係手続きのときには、親子関係や離婚歴などがわかることが多いです。しかし、それらの情報が不正行為・犯罪につながるかどうか。(事情があって、親兄弟にも自分の「住所」を秘密にしている人がいるので、そういう場合は犯罪にまではならないと思いますが、トラブルになるかもしれません。)
相続人が印鑑証明書をだまし取って、財産・遺産を奪うというケースはあまり多くはなく、また、注意すれば防げるものが多いと思われます。また、不正があると疑われる場合には、どんな登記書類を使ったのか、後日、調査も可能だと思います。
ただ、相続関係の手続きの場合、遺産分割の協議を開始してから終了するまでに、紆余曲折・二転三転することがめずらしくありません。
「そういうことなら、まず、この書面に署名押印しよう。」
という「中間結果」が出た後で、未解決の事項・部分を協議しているうちに、既に署名押印した書面の記載内容に変更が生じるとか、その書面全体を無効にするというようなこともありえます。実際にはよくあることだと思います。
その書面を間違いなく破棄するなどすればよいのですが、忙しかったり、混乱したりしていて、回収し忘れるようなことはないでしょうか。
ここで回収し忘れた書類と他の名目で手に入れた印鑑証明書を使って、何か悪事をはたらく人がいるかもしれません。
特に、口頭での話し合いをしていて、まとまった(と思ってから)書面にすると、意外と流れがわからなくなっているのでお勧めしません。
そういう心配があるのでしたら、はじめから専門家に手続きを依頼したほうがよいと思います。
専門家に依頼するといっても、専門家が勝手にやるわけではありません。たとえば、一方が提示した条件を、
- 法令に違反しないか確認
- 清書して通知
- 修正の申し出があれば
- 最初の条件を修正して書き直す
というような作業の繰り返しです。
遺産分割協議でも契約書でも、「人を見たら泥棒と思え。」ということでは円滑に進みません。しかし、お金が絡むと悪いことを企む人もいるので注意は必要でしょう。
実印登録するとき
実印の悪用の話にもどりますが、実印を持っていなくても、印鑑登録をしていなくても、通常は困りません。
印鑑登録証明書が必要ないなら、実印も必要ありません。「実印」とは印鑑登録したハンコのことだからです。
実印登録しても、この登録を廃止すれば(廃印届け)をすると、そのハンコは実印ではなくなります。
実印と印鑑登録証明書を使うとき
職業上使用するのではなく、一般の人が実印と印鑑登録証明書を必要とするケースは、
- 自動車(普通自動車)の購入
- 不動産売買や相続・住宅ローンの借り入れ
- 保証契約締結
- 遺産分割協議書作成
だいたい上記の4つくらいでしょう。
ということは、上記の4つのことをするときに、ハンコを用意し、役所で印鑑登録をして、印鑑登録証明書を取得すればよいということです。印鑑登録は役所で、その場でできます。即日、完了します。ハンコは極端にいうと、三文判でかまいません。
印鑑証明書の有効期間
印鑑登録証明書の有効期間を聞かれることがよくありますが、特に決まってはいません。
「〜に使用する場合は発行からXXか月以内」と法令で決めてあるならその期間が有効期間です。印鑑登録証明書を受け取る側が、「発行からXXか月以内のものを持ってきてください。」というなら、そのようにするしかないでしょう。
一般に有効期限が役所での発行日から3か月のことが多いですが、有効期限がないものも結構あります。
とにかく、「受け取る側が決めること」です。
「本人が自分のハンコを持って、役所に印鑑登録した。だから、この印鑑登録証明書を持ってきた人は、間違いなく本人である。」という証明に使うなら、有効期間は短いほうが信頼できます。
役所で当日発行したものを持ってきてもらったほうが、半年前に発行された印鑑登録証明書よりも、悪用される可能性は少ないでしょう。
しかし、当日発行のものでなければ受け付けないのでは、時間的にもかなり不便に違いありません。
余談ですが
印鑑証明書を渡した後、3か月以上経ってから、
「やはりこの手続きはしないことにするから印鑑証明書返してほしい。」
と言っても、
「どうせ有効期間は3か月だから気にしなくていい。」
と言って返してくれなかったという実話があります。
有効期間がないこともありますからお気をつけください。
実印は一生ものか
成人になった時に、たとえば親から高価な実印をもらう人もおられるかもしれません。実印と銀行印と認印の3つセットもよく売っています。
印鑑登録証明書に有効期限がない(無期限で有効)な場合もありますから、20年前のものを保管されて、それを悪用されては困るというのなら、実印を変更してはいかがでしょうか。
こういうたとえが適切かどうかわかりませんが、「一生、ひとつの実印を使う」ということは、「パソコンやインターネット上で使うパスワードを一生変更しないようなもの」ということはできないでしょうか。
上に書いた「印鑑登録証明書が必要なとき」にハンコ(実印)を作って、印鑑登録する、そして、その用事が済んだら、廃印する(実印登録をやめる)。また必要なときには、ハンコを作って印鑑登録をすれば、いわば「ワンタイム・パスワード」です。流用・悪用されることは少なくなると思います。
印鑑証明書が必要な場合が、上に紹介した4つ程度なら、ハンコを3つ・4つ持っていて、印鑑証明書が必要になったときに、「印鑑登録」と「廃印」を繰り返せば、「ひとつのハンコが実印である期間」はかなり限定されます。
不正のプロなら紙幣でもパスポートでも作れるのですから、不正がないとはいいませんが、はじめに書きましたように、通常は、相手に印鑑登録証明書を渡しても財産を奪われることはないものです。
「不正をされると困るので、あなたには印鑑証明書を渡さない。」といえば、遺産分割協議がスムーズに行かなくなって困る可能性のほうが高いと思います。
銀行ではハンコ(実印・銀行印)よりも、筆跡とかキャッシュカードを信頼しているようです。
あらためて考えてみると、ハンコの偽造は可能なような気がしてしまいます。
自分が知らないうちに、実印で連帯書証人にされてしまった人を何人も知っているという人もいるようですが、ご自分の周りにそういう人がおられますか。(私の周りにはいません。)
相続・遺言書・遺産分割 川崎市中原区
どなたかが亡くなって、自分が法定相続人だということになると、遺言書をさがしたり、戸籍謄本を取り寄せたりすることから始めるでしょう。
それらも手間のかかることが多いですから、専門家に任せるかたも多いです。
- 一般論やひとことで済む内容なら無料相談となります。
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