法律用語では、「予備的△△」というのがよくあります。
まず何か(たとえばAという事実の主張)を主張しておくけれども、それが認められないなら、あらかじめ別の主張(Bという主張)を用意しておくものです。
なんとなくずるいような印象を受けるかもしれませんが、本当のことを主張しているのに、証拠がないから認められないようなケースはよくあります。
それなら、仕方がないから多少本来より損をするかもしれないけれども、裁判等で認められる主張に変更して、少しでも本来の利益を守ろうとするようなものです。法律上・訴訟上のテクニックと言えるかもしれません。
また、以下のように「遺言書」の場合は、そのようなテクニックではなく、自分の遺志実現のために必要な方法です。補充遺言ともいいます。
予備的遺言の例
「相続について、私の所有する建物Aと土地Bは、私の内縁の妻であるC子に遺贈する」という遺言書を作成することができますが、C子さんが自分より先に死亡した場合、建物Aと土地Bはどうなるのかが問題となります。
その場合に、たとえば「・・・C子に遺贈するが、もしC子が私より先に死亡したら、C子の長女のD子に遺贈する」というのが予備的遺言(補充遺言)です。
もしC子もD子も私より先に死亡したら・・・と考えていくときりがありませんが、現実的に考えると、それほどたくさんのことを想定する必要はないと思います。C子さんもD子さんも自分より先に死亡した場合、その財産は法定相続人の協議で分けるとか、法定相続分どおりに配分して問題はないのではないでしょうか、もし、その場合に、特定の人に財産を渡したいなら、それはきちんと記載しましょう。本当に起きるかもしれないいくつかのケースについては予備的遺言として記しておくことをお勧めします。予備的遺言とも補充遺言ともいいますが、実務上、呼び方はどちらでも構わないと思います。
遺言書の起案
もし、予備的遺言がなく、遺言書に書いたことが実現不可能(C子にあげたいけれども、C子の方が先に死亡してしまった)なら、その遺言内容はなかったのと同じことになります。遺産分割協議で法定相続人が決めることになります。遺産分割協議で決まらない場合は調停等です。遺言書が「無効」になったり、本来、本人が予定していたことと異なる結果になることがあります。
上の例のような遺言内容にしたいという相談があった場合には、「もし、C子さんが病気や事故であなたより先に死亡なさったとしたら、どうしたいですか?」と私はお尋ねするようにしていますが、行政書士や公証人はそのように尋ねなくてはならないわけではありません。遺言書を作成したい理由や、ご希望の内容や不安なことをお知らせいただければ、そのような遺言書になるよう工夫します。
かつての同棲相手に遺産を
もう長い間交流がないけれども、かつて同棲相手に辛い思いをさせたので、自分の遺産のうち、△△銀行にある預金はすべてその同棲相手に遺贈したいというようなご相談もあります。
この場合、その同棲相手であるEさんには、△△銀行にある預金しか行きませんから、遺言書作成後もEさんにあげたい額は、その後の事情に応じて変更できるでしょう。
昔のことでもありますし、また個人情報保護法がありますので、かつての同棲相手を探し出せないこともあるでしょう。その場合は、「もしEさんを探し出せなければ・・・」とか、「もしEさんが受け取りを拒否したら△△に寄付する。」などの工夫もできます。予備的遺言・補充遺言にするかどうかも含めて、遺言書でいろいろな工夫が可能です。ただし、遺言書はわかりやすいということも重要です。
川崎市中原区の相続・遺言
遺言書を作成しない人は多いと思います。相続分割合を指定しなくても、相続人が遺産分割協議で決めるだろうということなら遺言書は必要ないでしょう。また、「このような遺言書なら、ないほうがよかったのに。」と思われるような遺言書もよくあります。
遺言書を作成しないほうがよいか、作成したほうがよいかというご相談も承ります。気になることがあれば早めにご連絡ください。
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