亡くなった人が住んでいた家
相続開始時に、すでに子供が成人し、地方の実家を離れて住んでいる場合など、亡くなった親の不動産をどうしてよいかわからないケースが増えています。
- 亡くなった人の配偶者がいれば、そのまま住み続けるでしょうが、誰も住まなくなってしまったら売却して、売却益を相続人で分ける。
- 売却するなら、建物と土地を両方そのまま売却するのか、それとも、更地にして売るのか。一般には更地にした方が高値で売れると思いますが、更地にするのに費用がかかります。
- 売りに出しても、買い手がつかないこともあります。場所などの条件によっては、タダでもいらない、という不動産があります。
- 建物をリフォームして売るとか、賃貸することも考えられますが、費用がかかります。何年でリフォーム費用を回収でき、相続人がどれだけ収益を得られるかの計算は大変です。
- 誰も住まなくなった家を放っておいても税金はかかります。管理費用もかかるでしょう。管理が不完全な場合、事故などの際に損害賠償責任があるかもしれません。
- 相続人が引き続き住むとなると、その不動産価格をいくらと算定するかで、遺産分割協議が大きく変わってきます。取引価格で評価した場合、その額を相続したとして計算すると非常に高額になって、他に何も財産をもらえないどころか、他の相続人に毎月「ローン」として支払い続けなければならないかもしれません。
預貯金や現金も問題になりますが、持て余したり、困ったりするのは不動産でしょう。
不動産価格の算定
相続が開始して、遺産分割協議をするとなれば、「相続財産目録」が必要です。目録にしなくても、一覧表(数行かもしれませんが)は必要でしょう。
相続財産の中に不動産があると、たいていはその不動産の価格を算定することになります。しかし、
そのような場合なら、不動産の価格は気になりません。税金の問題も納得しているものと思われます。実際に、そのように相続手続きをなさる方は多いでしょう。
不動産の評価
建物と土地ですが、地価ですと以下のような評価方式があります。
- 実勢価格:実際に売買した場合の価格。
- 公示価格:地価公示法に基づいて、国土交通省の土地鑑定委員会が、地域の標準的地点における毎年1月1日時点の正常な価格を公表したもの。
- 路線価:主要道路に面した1平方メートルあたりの価格を国税庁が決めるもの。相続税や贈与税の算定基準とする。公示価格の8割程度といわれています。
- 基準地価:国土利用計画法施行令に基づいて、都道府県知事が毎年7月1日時点の標準価格を判定したもの。
- 固定資産税評価額:市区町村が固定資産税の課税のために算定するもの。公示価格の7割程度といわれています。
建物ですと、固定資産税評価額を利用すると簡単です。簡単なのでよく使われますが、その他の方法もありますから、本当に公平に遺産分割したいとなると結構たいへんです。
どのように評価するかによって遺産額が異なってくることになるので、場合によっては大問題です。「押しの強い人」「声の大きい人」の意見がとおってしまうかもしれません。それを防止する手段としては、「納得できるまで遺産分割協議書に署名押印しない。」ことですが、何らかの事情で遺産分割協議を終えなくてはならない期間があるかもしれませんし、どこかで折り合いをつけないとお互いに損をするかもしれません。
相続の場合は安い
被相続人(たとえば親)の住んでいた土地建物を、たとえば同居していた長男が相続する場合、他の兄弟姉妹が不動産をもらわない代わりに、ほぼ等しい預貯金などをもらうということはよくあります。
相続にあたっては、不動産価格は通常の売買より安く算定されます。親と住んでいたところにそのまま住み続けるのに、業者から買うのと同様の価格で「親から買った」と算定するのは気の毒です。
しかし、不動産を相続しなかった兄弟姉妹が、「その不動産を売って、相続人全員で均等に分けた方が相続分は増える」と主張するとどうなるでしょうか。土地にもよりますが、人気の場所では、将来的に価格が上昇するかもしれないのです。
もし売却せずに、相続人のうちの誰かがそのまま住み続けるなら、時価で売却した場合の価格で評価したい、という主張もあり得るでしょう。
遺産分割協議で全員の合意が得られれなければ、調停、審判、裁判などいろいろありますが、みんなが論理的に納得できるように、本当に均分に分けることは至難の業です。
そのためには、生前の遺言書を上手に作成しておくのが一番よいと思います。